最近の研究2

 

最近の研究1で紹介したYbNi3X9(X=Al, Ga)はTrigonalであり、空間群はR32です。このように回転しか含まないような空間群の場合、反転対称性と鏡映をもっていません。したがって、キラル性を持ちます。つまり、左手と右手の結晶ができる可能性があります。通常、無機化合物の場合に、左手と右手の構造はラセミ混晶となってしまうことが多く、大きなキラル体を得ることはできません。

これに対して、YbNi3X9(X=Al, Ga)は異常分散を利用した絶対構造を決定(東大物性研究所の共同利用による)したところ、キラル体であることがわかりました。もちろん、測定に用いた試料の大きさ(50μm程度)よりも大きな試料でもキラル性が維持されているかどうかは調べる必要がありますが※1、磁化の磁場依存性などから、キラル磁性特有の振る舞いが観測されており、新たな視点でのYbNi3X9(X=Al, Ga)の研究が始まりつつあります。※2

YbNi3X9(X=Al, Ga)は、三角格子が積層した構造を持っており、ラセミ混晶になるには、積層欠陥をいれる必要があります。したがって、きれいな結晶が成長することが、キラル体となることとつながっているのではないかと考えています。逆にラセミ混晶を作り出すこともできないかどうか、興味が持たれます。※3

六方晶R2Pt6Ga15(R=La-Lu)の単結晶合成に成功し、結晶構造と磁性を研究しています。この物質はアキラルですが、RNi3X9(X=Al, Ga)とよく似た結晶構造を持っています。いわば、RNi3X9(X=Al, Ga)のラセミ混晶とも言えるので、比較検討していきます。

1 大きな結晶を砕いてたくさんのかけらについて測定した所、全てキラル結晶であったことから、大型結晶でもキラル構造が維持されていることがわかりました。

2 Yb以外の希土類元素についても単結晶合成を行い、基礎的な磁性をおおむね測定し終わりました。

3 ラセミ体はむずかしそうですが、反転双晶は存在することがわかりました。

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